経済理論では,
機会費用
は費用であり, 個人が合理的な経済行動をするためには,
機会費用
を費用とみなすことが必要となる.しかし, 実際に個人が
機会費用
を通常の費用, すなわち実際に支払う費用と同じとみなすかについては実証分析をしてみないと, はっきりとしたことはいえない.そこで, 本研究では, 被験者に対し仮想的な状況の下で回答をしてもらうアンケート調査を実施し, 個人が財の消費量を増やすときに課税される場合の消費量の変化と個人が財の消費量を減らすときに補助金を与えられる場合の消費量の変化を比較することにより, 個人が
機会費用
(補助金) を費用 (税) と同じとみなしているかをテストした.個人が
機会費用
を費用とみなすか否かは, 経済理論の基本的前提に関わる問題であり, 税や補助金の政策効果についての洞察を得ることは, 政府による公共政策の前提に関わる問題でもある.本研究では, 大学生と短大生を対象に調査を行ったが, 被験者のうち, 無視できない割合が, たとえ金額が同じだとしても,
機会費用
を通常の費用と同じと認識していないという結果が得られた.これは, 人間の情報認識能力が完全でないことを示すものであり, 経済学も行動主体の人間自体を研究対象とする必要があることを示すものである.
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